静岡県の三島署と県警刑事部特別捜査班は、SNS型ロマンス詐欺で約1200万円を騙し取ったとして、沼津市大岡に住む63歳のアルバイト従業員の男を逮捕しました。今回の逮捕は、詐欺グループの一員として被害者の恋愛感情を悪用し、暗号資産を使った資金洗浄(マネーロンダリング)に関与していた疑いがあるとして、県警が捜査を続けていたものです。
■事件の経緯
逮捕容疑は、氏名不詳の共犯者と共謀して2023年7月中旬から8月下旬にかけて、SNS上で外国人女性を装い、函南町に住む30代女性に接触したことから始まりました。「日本に渡航する予定の外国人女性」と偽り、被害女性に親近感を抱かせるメッセージを繰り返し送りました。やがて、女性に「荷物が税関で保留され、手数料を支払わなければならない」という嘘をつき、男性名義の銀行口座に現金を振り込ませたということです。
被害者の女性は、SNSのやりとりで英国人女性を装った人物から、繰り返し親近感を示すメッセージを受け取り、信頼を築かれてしまいました。その結果、数回にわたるやりとりの中で約1200万円を複数の銀行口座に振り込んだほか、電子マネーカード約2万円分を購入し、その利用権を詐欺グループに渡しました。
■詐欺の組織的関与
容疑者の男は、詐欺グループの一員として複数の銀行口座を用意し、共犯者と連携して犯罪行為を行っていた疑いが強まっています。県警は、犯罪収益を暗号資産に変えることで資金洗浄を行っていた可能性があるとして、さらなる捜査を進めています。
捜査は、主に詐欺に使われた銀行口座の追跡やスマホの解析を通じて進められました。容疑者が所有していた十数口座が詐欺に悪用され、振込金が暗号資産に変換されていたことが判明しました。捜査班は引き続き、組織的な詐欺行為の実態を解明し、他の関与者の特定を急いでいます。
■特別捜査班の役割
静岡県警刑事部に設置された「特別捜査班」は、SNS型のロマンス詐欺や投資詐欺など「非接触型」詐欺に対応するためのチームです。この捜査班は、通報や情報提供を基に捜査を開始し、銀行口座の照会やスマートフォンの解析を行っています。三島署による今回の逮捕は、磐田署や湖西署に続く3例目となり、同様の詐欺事件が広がっていることを示しています。
詐欺に関わる口座の照会や送金履歴の追跡は、捜査の重要な手がかりとなります。今回も容疑者のスマートフォンのやりとりや銀行口座の動きを解析した結果、詐欺の証拠を掴み、逮捕に至りました。捜査班は今後も組織的な詐欺事件の実態解明に向けて捜査を続ける方針です。
■ロマンス詐欺の手口と注意喚起
今回の事件は、ロマンス詐欺と呼ばれる手口で、恋愛感情を利用して被害者に信頼を築かせ、その感情に付け込んで金銭を騙し取るというものです。今回の詐欺では、被害者の女性に対し、外国人女性を装ってメッセージを送り続け、ビジネスや渡航に関するトラブルを偽って金銭を振り込ませました。
詐欺の手口は多様化しており、恋愛感情だけでなく、投資話を持ちかけるケースも増えています。警察は、「一度も会ったことがない人物からの金銭要求は、絶対に疑うべきだ」と注意喚起しています。また、詐欺に関与していると感じた場合は、すぐに警察や消費者センターに相談することを強く勧めています。